2018年10月8日セミナー開催報告

大川カイロプラクティックセンターとごし銀座院セミナー
「カラダの使い方を深める!」 
講師 安藤崇先生(とごし銀座院

■胸椎CMT編/学んだことを現場でどう使っているのか


今日は実技を中心にやっていこうと思います。当院でやっていることはいたってシンプルです。何かに特化しているということはなく、皆さんが大川学院で習ってきたことを十数年以上やってきています。学んだことを現場でどう使っているのか、それらを深く掘り下げてみたいと思います。今日は皆さんを当院のスタッフだと思って教えていきます。
まずCMT(関節操作)について。CMTを現場で使っている人いますか? 最近は使わない人も多いかと思います。僕も患者さん全員に使うわけではありませんが、効果が高いので必要な方には使っています。「恐い」という方に対し無理してやるということは決してありません。
なぜ今回CMTをテーマに含んだかというと、CMTというのは意外と練習する場が少ないし「習ったはいいけど忘れてしまった」という方も多いかと思ったからです。技術のコツといいますか、もう少し突っ込んだやり方を知ったら、皆さんもまた興味がわくのではないかなと。
実際の施術で使う、使わないは別としてCMTは出来た方がいいですね。他の手技も上手くなりますし、体の使い方が上達するからです。いろんなセミナーに出た時も役立つと思います。

講師の安藤崇先生(とごし銀座院)
講師の安藤崇先生(とごし銀座院)

■特異的(スペシフィック)なCMTの練習


CBTP(Crossed Bilateral Transverse Pisiform)という胸椎伸展方向の動きをつけるテクニックで練習してみましょう。大川カイロでは、CMTは「ズレを戻す」という考えではなく「動きをつける」という目的で使います。今回はどういう効果があるのかという治効理論はやりませんので、技の部分、手の使い方などをよく見ていてください。
胸椎の伸展CMTですと、皆さんだいたいの見当付けをして、2~3レベルまとめて動かしていることが多いと思います。ですが、今日は特異的(スペシフィック)にやります。一つのレベル、椎骨を狙う練習です。
大切なことはきちんと椎骨が捉えられているかどうかです。「聞いたことあるけど実際やってみたら出来ない」そのようなことがありませんか? 知識として「知っている」のと「出来る」のは別なんです。是非「出来る」ようになりましょう!

胸椎伸展方向の動きをつけるCMTを実演する安藤先生
胸椎伸展方向の動きをつけるCMTを実演する安藤先生

■「引く」イメージでスラストする


胸椎の伸展ですから、背中側から「押す」というイメージがあると思います。背中から押して「ボキッ」と音が鳴る(クラック)。これは僕の主観なのですが、「押す」というよりは「引く」という感じなんですよ。
例えば、T4(第4胸椎)の動きを回復したいと考えた時、T4の横突起に、両側の豆状骨を前腕を交差して当てます。コンタクトが出来たら「息を吸って下さい」「吐いて下さい」と呼吸を誘導します。呼気の時に、胸郭の遊びを取り除くため背中側から押しこんでいき、遊びが取り除けたらボディドロップを使ってスラスト(突発的な関節操作)します。このスラストの時に、一瞬「引く」んです。
具体的には「小さい素早い手首の背屈」です。まずは手だけで形と動きを練習してみましょう。
手首を背屈しMP関節を屈曲します。手は力まずにやわらかくしておく。そのまま前腕は動かさず、手首だけ素早く小さく背屈してみてください。繰り返します。出来ない人は練習が必要。この動きをスラストの時に使います。

まずは手だけで小さく素早く背屈する練習
まずは手だけで小さく素早く背屈する練習

■目に見えないところで技術は差が出てくる


この手の形はカイロプラクティックハンドといって、他の手技でも使います。たぶん毎日やっていないと難しいかもしれませんね。この動きがなくても、強く押せば椎骨は動いてクラックするんです。ですが僕たちは手技療法のプロ、やっぱりこの手は出来た方がいいです。何よりスラストのスピードが上がります。患者さんの負担も少ないです。
CMTで大事なのはスピードタイミングイメージ。背骨の椎間関節は何㎝も大きく動くものではありませんよね。ほんのちょっとの圧力でキャビテーション(クラック音がなる現象)が発生するわけですから。力任せではないこの小さな動きを、ボディドロップといかに合わせてスラストとしておこなうか。
外から見たらわからないくらいの手の動きです。イメージの中でこういう使い方をする、ということ。端からみて分かったらそれは動きが大きすぎます。
このような手の使い方をはじめ、技術というのは目に見えないところで差が出てくる。見た目が派手で「わっすごい!」というようなものばかりが技術じゃないんです。

脊柱模型を使って基本のフォームを確認
脊柱模型を使って基本のフォームを確認
側臥位の腰椎CMTも練習。一人一人見回ってチェックする安藤先生
側臥位の腰椎CMTも練習。一人一人見回ってチェックする安藤先生
ランバーロール(腰椎CMTのテクニック名)で標的となる関節に狙いを定めているところ
ランバーロール(腰椎CMTのテクニック名)で標的となる関節に狙いを定めているところ

■野球肘編/ニュースをみて不安が強くなる子もいる


最近、エンゼルスの大谷翔平投手が米国でトミー・ジョン手術を受けて成功したというニュースが出ていましたね。トミー・ジョン手術って皆さんもご存知ですか? 腱の移植をする手術です。人体の中で、なくても影響が少ないところ、例えば前腕の長掌筋腱などの一部を摘出して移植するんですが、成功率も高いと言われていて近年は受ける人も増えているそうです。100%じゃないでしょうけども、確かに競技に復活して活躍している人も多いですよね。
皆さんが対応している、野球などをやって肘が痛いという方はどうですか? 野球をやっている少年だったり、草野球で痛くなったという大人の方で「手術を考えている」という人はまずいないですよね。
トミー・ジョン手術は日本でも行われていて保険も効くらしく、レベルも高いと聞きました。僕の地元にある整形外科でもやっていました。僕は高校生に野球を教えているんですが、その中で肘が痛いという子がいます。当院に肘の痛みで野球少年が来院することもあります。その時は当然ですが、まず「手術した方がいい」などとは言いません。
僕が問題だなと思っているのは、トミー・ジョン手術がこれだけ話題になると、「僕も手術した方がいいのかな」と強く不安を感じてしまう人が増えることなんです。手術というのは最後の手段。まずは温存療法でいいんですよ。切羽詰まって選手生命がかかっている、などとプロの人は仕方ないですけどね。

■TPTは特に効果的!


僕が診ているほとんどの野球少年、青年は前腕の筋肉群や上腕二頭筋がパンパンに張っている、そのレベルで来院します。皆さんのところも同じだと思います。それくらいの症状であれば出来ることはいくつもあります
もし病院で剥離骨折という診断がついたのであれば、それは投げないで治癒を待つしかないんだけども、病院でもとくに原因がわからず肘が痛いという場合は、これはもう皆さんが得意とするTPT(トリガーポイントセラピー)をやってあげてください。これが一番効きます、間違いなく!
どのように手技をやっているかというと、基本は上腕骨内側上顆周辺ですが、いくつかポイントがあります。人によって張っている部分が違うので、いろいろ検査しながらやっていきますが、効率がいいのは肘を曲げた状態で前腕の回内・回外をしながら硬結を探し緩めていくこと。硬結を捉えると皆さん「痛たたっ・・・」と痛がります。「これで大丈夫?」と圧の強さを確認しながら進めていきます。
緩める方法は皆さんが大川学院で習った上肢のテクニック「UE」でもいいんですよ。これらをやってあげるだけで順調に回復して「随分最近いいです」と言ってもらえケースが多いですから。

野球肘への対応。前腕を回内・回外しながら硬結を探し筋緊張をリリース
野球肘への対応。前腕を回内・回外しながら硬結を探し筋緊張をリリース

■僕らに出来るのはケア


ただ、野球肘の場合、実際は投げるフォームに問題があることが多いです。加えて、その人の元々もっている身体的なもの、負荷がかかると硬くなりやすいなどの体質です。施術者が野球をやった経験があるのであればフォームの指導も出来ますが、そうじゃなければ僕たちに出来ることはやっぱりTPTです。
肘の外側が痛いというのはほとんどない。痛いのはたいてい内側。でも日常生活の動きは問題ない。よほどの重症でなければ、痛いのは投球の時だけです。重い物を持つのも意外と大丈夫なので、筋力トレーニングはどんどんやってもらって構わない。
これだけ医学が進歩していても野球肘は減らないですね。やっぱり、投球回数が多かったり、投げ方に問題があって変な力が肘にかかれば痛くなるのも当然なんです。だから僕らの出来ることは「ケア」なんです。

セミナーでは負担の少ない投球フォーム、ペットボトルを使った指導法も実演
セミナーでは負担の少ない投球フォーム、ペットボトルを使った指導法も実演

■心因的要素も考えた対応を


あまりにも肘の痛みが強いようであれば投球は休んでもらった方がいいんだけども、これもね、僕らは一方的に「やめなさい」とは言えないんですよ。例えばお医者さんから「〇ヶ月は投げちゃダメ」と言われれば、本人はかなり気持ちが凹みますからね。
心の中で休みたいと思っていても、自分に負けた気がするから休めないという子も多い。そこで他人から、例えば僕らのような人から「ちょっと休んでみたら? 後がよくなるから」というような感じで言ってあげると「じゃ、少し休んでみようかな」という気持ちに自らなれることがあります。このように「大丈夫だから」と話をしながら施術していると回復も早くなることがあります。
トレーニングは昔からあるグーパー運動、血流をよくするためにこれを沢山やらせるといいです。普通の腕立て伏せもできると思いますからどんどんやっていいと思います。ストレッチは痛くない範囲から。筋肉が硬くなっているのではじめは痛いと思いますから徐々に。
高校で野球の指導をして気づいたこと、思ったことですが、ほとんどの子は心因的な要因も強く働いている気がします。実際の損傷レベルよりも「痛い、痛い!」というのが蔓延するんですよ。一人「痛い!」と言い出すと、翌日から同じように「痛い!」という子が出てくる。不思議です。
腰痛だけでなく、痛みに関しては、心因的な要因というのは必ずいくらかの割合では含まれるんだろうなとあらためて思いました。

野球肘に対し、患部の血流をよくするためのグーパー運動はとくにお勧め。グー

野球肘に対し、患部の血流をよくするためのグーパー運動はとくにお勧め。パー
野球肘に対し、患部の血流をよくするためのグーパー運動はとくにお勧め。

■参加された皆さんの声


  • 骨格、関節に対し細やかなイメージを持って丁寧にアプローチしていくことの面白さを味わいました。そのことで筋肉や神経の緊張が効果的に緩むのが実感できました。ありがとうございました。
  • CMT(アジャストメント)は「なあなあ」でやっていた自分に気づけました。改めて脊椎のレベルに集中すると動かしたい関節を動かせました。
  • 内容の濃いセミナーありがとうございました。一番興味深いのは「ブリージングウォーク」(呼吸法を伴う歩き方の練習)でした。明日からすぐ使えそうなのでおこなってみたいと思います。
  • 「知っていると出来るは違う」。しっかりと出来るよう日々の行動を深く見ていきます。CMTを学ぶ機会がなかなかないのでとてもためになりました。
  • シンプルな手技を深く学ぶ発見がありました。ありがとうございました。
  • 最近CMTがしっかりやれていないのでとても勉強になりました。ポイントが絞られていて、すごくわかりやすい内容でした。やはり学院の基本は重要と思いました。
  • 基本的な体の使い方など学び直せました。CMT以外で頚椎を動かす方法など新しい技術も取り入れていきたいと思います。
  • 骨をイメージするという事忘れていました。普段CMTを使わなくなっているので、これから少しずつやっていこうと思いますが呼吸法も力を抜くのにとても良いと思っていますので、色々使わせて頂きます。
  • CMTの見直しも出来て、改めて一つ一つの動作のコツを教えていただけたのでわかりやすく勉強になりました。
  • トレーニングセンター(大川グループのスタッフ研修施設)に通う私でもトライしてみたいと思えました。何となくの練習ではなく、意識をして練習する事をやってみます。貴重なお時間ありがとうございました。