2017年10月9日セミナー開催報告/ウェイトトレーニングと体の使い方

■ウェイトトレーニングのことは知っておこう


皆さんの中でスポーツジムで体を鍛えているという方はどれだけいらっしゃいますか?
私はウェイトトレーニングについては、知らないよりは知っておいた方がいいと思っています。というのも、今これだけ健康がブームになっていて、ジムに通っているという方が患者さんでも多くなっているからです。
最近は「こういうトレーニングを教えてください」「今ジムでこういうことをやっているんですけどどうなんですかね?」などと患者さんから聞かれることも増えました。
ウェイトトレーニングというのは簡単にいうと筋肉に「負荷をかける」トレーニングです。バーベルを持ったりマシンを使ったり、後は自重ですね。自分の体の重みを生かしてトレーニングする。目的は筋肉を大きく強くすることです。
やったことがある人はわかると思いますけども、続けていると力が段々ついてきます。挙げられなかったものが挙げられるようになり、今までよりも見た目ががっちりして強くなった気がします。患者さんたちもいろんな目的があってジムに行っているんだと思いますが最近は女性の方も多いですよね、「腹筋を割りたい」「筋肉をつけたい」と言って。

■あえてきつく「非合理」に動かす


代表的なトレーニングにスクワットがあります。バーベルを担いだりマシンを利用して、グーッとゆっくり大腿四頭筋や大殿筋を意識しながら負荷をかけて鍛えていく。あえて「非合理」に体を動かすんですよ。
例えば「しゃがむ」という動作があります。普通、人はこう「パッ」としゃがみますよね。でもスクワットはそうじゃない。あえてゆっくりしゃがむんです。
わざと「筋肉が疲れるようにきつく」している。それは筋肉にストレスをかけたいから。ゆっくりと動かすのは「血流を制限したい」からです。皆さん、筋肉をグッと緊張させると血液の流れはどうなりますか?
悪くなりますよね。そういう状態を作って動かすから非常に辛いんです。諸説あって、血流を制限させた方がストレスで代謝物が出て筋肉がつきやすいと。加圧トレーニングなんかもそうです、加圧ベルトで絞めて血流をあえて悪くする。このようにウェイトトレーニングというのは、あえてきついことをやるんだということを憶えておいてください。

■トレーニングの弊害「効かし癖」


患者さんの中には一生懸命このようなトレーニングをしている人も多いのだけれども、合理的ではない動きを体に憶え込ませているものだから、時に弊害が出てくることがあります。「効かし癖」というものです。
しゃがむので下にスッとしゃがめばよいのに「いちいち力を入れて」しゃがんでしまう。物を取るのもそう。「いちいち力を入れて」取ってしまう。
スポーツもです。トレーニングして筋肉がついて体重が増えたけれど「何かヘッドの周りが悪い」「うまく走れない」そんな話を聞くことがあります。
なぜそうなるか? ウェイトトレーニングの動きが合理的じゃないからです。目的が全然違うんですよ。

■「合理的な動き」を身につけるには


ウェイトトレーニングはあくまでも筋肉を太く強くするためにおこなうもの。だからそれ以外のことに体を使える状態にするには、スキルトレーニングも同時進行させていかないといけない。そうしないとなかなか「合理的な動き」は出来てこないです。
「合理的な動き」とは? しゃがむという動作にしてもスクワットでは「ジワーッ」と負荷をかけますが「合理的な動き」では必要最低限の筋力で「スッ」としゃがみます。スクワットのように大腿四頭筋を意識して「いちいち効かせる」「いちいちきつい」ということはない。
立ち方もそう。体を前にゆすったり、ちょっとした反動を使って立ち上がる。自分でブレーキをかけながら「ギギギギ」って立ち上がるのと、リラックスして、ただ頭の反動や重みを利用して「スッ」と立ち上がるのとの違いです。

■うまく体を使うために「スキルトレーニング」を!


考え方が筋力重視になって「脚の筋肉をつければスッと立ち上がれるはず」と思っている人がいるけれども実はそうじゃない。ウェイトトレーニングは非常にいいものなんですよ、さっきお話したように。それはそれでいいんだけれども、逆に体の動きを邪魔してしまうようであれば本末転倒かなと。
もし「ウェイトトレーニングをしているけどなかなかうまく体を使えない」という人がいたら「スキルトレーニング」つまり「体の使い方」を教えてあげるといいですね。
今、皆さん椅子に座っていますよね。イスから立ち上がってみましょうか、一切反動を使わずに。グーッと脚に力を込めて脚の筋肉だけで立ってみてください。呼吸もあまりせずに。
しゃがむときも一緒、なるべく反動を使わずにやってみましょうか。これが「効かせ癖」がついている人の体の動かし方です。

■体を「かばっている人」も非合理な動きをする


「効かせ癖」がついている人と特に連動するのはどこか体を「かばっている」人。
「腰が痛い」「膝が悪い」「股関節が痛い」など体に痛みがある人、体のどこかが悪いと思い込んでいる人って先ほどのウェイトトレーニングをしているかのような立ち方をすることが多くないですか? 「ウッウッウッ・・・」とこんな感じで。
さっきのスクワットの動きとあまり変わらないですよね。自分の体だけ持ち上げればいいのに、何か重い物を担いでいる感じ。実際には反動をつけた方が間違いなく楽なんですよ。
「いや、反動つけると腰が痛いんじゃないか・・・」って思うかもしれないですけど、よく考えてみてください。

■「身体動作トレーニング」


皆さん、反動をつけて立ち上がってみましょうか。思いっきり反動をつけてみてください。どっちの立ち方が楽ですか?
呼吸も入れてみましょう。さっき呼吸、練習しましたね、鼻から吸って口からフッーと吐く。
「フーーーーーーッ」(イスから立ち上がる)
「フーーーーーーッ」(イスに座る)
どうですか? 反動つけた方が楽だった方? あまり変わんなかった方? たいていの方は楽なんじゃないですかね。
ウェイトトレーニングをやって「効かせ癖」がついている人も「かばう動き」の癖がついている人もあまり変わらないって考えています。じゃ、どう合理的な体の使い方を伝えればいいのか。「身体動作トレーニング」という言い方をしていますけども、こんな感じでいっしょに体の使い方を練習してるというのを次にやってみます。

■スポーツでは「反動」を使う


スポーツはどちらかというと「反動」を利用します。筋肉は立ち上がりの時、初動に必要なんです。ただそれ以降は筋肉のブレーキを外してあげないと動けなくなります。
ボール投げる時に力いっぱい投げようと思ったら腕は振れないです。振る時にちょっとだけ筋力は必要だけれども、後は「抜く」のがコツ。ゴルフのスウィングもそう。瞬間的には筋力を必要とするけど、後は「流れを止めない」ようにします。

■呼吸・反動を使い「全身」で立ち上がる


日常生活の動きも同じ。
「腰が痛い」「腰が悪い」と思い込んでいる人、たいていイスから立ち上がるのがきついですよね。そんな時はさっきの呼吸を使いましょう。
まず1回吸って、「フーーーーーーッ」と吐きます、リラックスしながら。
2回目の呼吸の力、吸ってー、吐いて~で「スト―ン!」と立ちます。
頭を振って反動をつけて。なるべく筋力は使いません。
全身を使って1か所に集中させないようにします。ウェイトトレーニングは1か所に集中させるんです。体をかばっている人も1か所に集中しています。これを分散させます。
「フーーーーーーッ」(イスから立ち上がる)
「フーーーーーーッ」(イスに座る)

■トレーニングだから1回で出来なくてもよい


皆さん凄く軽くないですか! やっていると段々わかってきますよ。
何でもそうだけど1回で出来なくてもいいんです。1回で出来ないから回数やる価値がある。患者さんとこのような練習をすればいいんです。
おそらく強く腰やいろんなところに「不安を抱えている人」「不合理な動きをする癖がついている人」はこれをすぐに理解することはできない。だから一緒にやるんです。何回も何回も時間かけて。出来なければ1ヶ月位のスパンでね。

それだけやっているとさすがに上手くなりますよ。「立ち上がるのはこんなに楽だったのか!」と患者さん自身が感じられたらそれでOK。もう自分の力で何でもできます。1回で何でも変えようとしないということ、トレーニングですからね。