2023年7月17日セミナー開催報告

■私の腰痛・坐骨神経痛の経験


私は整体師になって19年目になります。中学2年生ぐらいからの腰痛持ちで、高校1年生の春にはぎっくり腰になりまして、それから坐骨神経痛になったんですね。
大学病院で保存療法を受けました。鍼灸治療も受けてまして、頭の先から足先まで、たくさん鍼を入れて。しばらくは緩むんですけど、また痛みを繰り返しまして。左脚は「火箸を差し込まれてグリグリやられているんじゃないか」という厳しい痛みでした。
病院に入院して、しばらく寝たきりで牽引を1週間程度やりましたけれども、症状が治まらないので手術ということになりました。もう当時はひどかったですね。手術後2ヶ月間ベッドに張り付けです。抑制帯で縛られて動かしちゃダメと。お盆を胸の上に置いて食事は鏡を見ながら食べるという。
脚はガリガリに痩せてそこからリハビリしました。そういう時代でした。今はね、日帰りの手術もありますから、そんなことはないと思います。
その後は無事回復しまして、大学生の時は4年間、大会の剣道部で活動するくらいの体力も戻っていたんですけど、社会人になってから、1年目でまた出張先で「ぎっくり腰」になりまして、病院に搬送されてブロック注射を打ちました。
社会人1年目で、手術から8年経過した頃にまた同じような痛みが出てきたということです。病院で治療して今回のように同じことになったら嫌だなと思ったので、その時は病院には行かず、本屋に行っていろいろ読みあさってですね「世の中には整体っていうものがあるんだ」と知りました。
仙台駅前の整体院でしたけども、その時整体に行って確か10回ぐらい良くなったんですよね。20代前半の頃です。まあ、そんなこんながあっての今の私でございます。
今日は午前中座学ですが、体の使い方が大事なので、午前中の内に座り方、立ち方、歩き方をやり、皆さんの患者さん教育に役立てていただきたいと思います。午後の2時間は手技の練習を中心にやりたいと考えていますので、よろしくお願いします。

若い頃の腰痛・坐骨神経痛で苦しんだ経験を話す村井先生

■手術が必要と言われた方でも


ということで内容に入っていきますが、端的に行っていろいろ苦労したんですけれども、最近は自信を持って対応できるようになりましたので、それを皆さんにお伝えできたらといいなと思っています。
私も未熟なところはありますので「ここは違うんじゃない」「もっとこうした方がいいんじゃないの」というご意見がありましたら、皆さんから積極的にいただいて、本当にパーフェクトのものにできるといいなと。
対応が難しくなってくるのは、手術が必要とされている、働き盛りから高齢者の方です。でも40から50代の方で、お医者様から「すべり症です」「分離症です」「狭窄症です」「手術が必要です」との診断を受けた方、なんと整体で対応したらクリアできたりするんですね。どうやって症状を消失させたのか、また、なぜ楽になったのかっていうことを皆さんにお伝えしていきたいと思います。

■坐骨神経痛の事例紹介


実際、私が無我夢中でやったこと「何で結果が出たんだろう」って後からね、検証したようなことでもありますけども、裏付けとなる知識も加えて少しでもお伝えできたらいいなと思います。
坐骨神経痛の患者さんの例、いくつか書いていますけれども、バッテンがあるのがうまくいかなかった人。そうじゃない下から2つは「手術必要だよ」って言われた方なんですが「整体でよくなっちゃいました」というケースです。このお2人を中心に事例紹介していきたいと思います。

■坐骨神経痛の原因は?


坐骨神経痛になりやすい方はどんな方か。体を酷使している方が多かったです。
中には華奢で運動不足などの方もおられるんですけど、症状が重かった方は皆、体を酷使していました。座り仕事で、もしくは体を使う仕事で、趣味で酷使している。オーバーワークでメンテナンス不足の頑張り屋さんが多かったと思います。
坐骨神経痛の原因は何でしょうか? 皆さんはどうお考えですか?
結論を先にいってしまうと「血流が足りてないから」。だから「酸素が供給できたらいいんだな」っていうところにたどり着くわけです。
これは別に私だけが言っているんじゃなくて、多くの研究者とかね、学者の先生もそう仰っています。神経生理学的に何かの圧迫で痛くなる、しびれるというよりは虚血状態。酸素が足りてない、栄養が足りてないから痛みやしびれが出ている、そう考えた方が妥当じゃないかっていうふうに言われています。
データに基づく話をすると、ある大学の研究チームが2000人以上を対象に脊柱の画像診断の結果を調べたそうです。そしたら脊柱や椎間板の変形、変性をもっている人が男性では8割、女性でも7割くらいもあったと。でも痛みがあるよっていう人は2、~3割だった。
内外の他の研究でも同じようなデータがあります。
ですから変形、変性があるから、それが即、痛みの原因ですよ、とは科学的には言い切ることはできませんという事実があるんです。ここまでよろしいでしょうか。

坐骨神経痛の原因について解説

■例えるなら凍結したバナナ


ちょっと視点を変えると、坐骨神経痛が出る人って体がガチガチに硬いじゃないですか。脚だけじゃないですね。腕も肩も首もガチガチになっています。
これは「ぎっくり腰セミナー」の時に使った画像なんですけど、私がよく説明しているのは「1本のバナナを考えてみてください」「あなたの体が1本のバナナだと思ってください」「フリーザーで凍結させたバナナだと思って下さい」「そんなバナナを曲げ伸ばししたら簡単にクラッシュしたりしますよね」「常温のバナナだったら多少曲げ伸ばししようとしてもなんともないですよね」という話をします。
施術しながらそういう話をすると「あ、それ納得感あります」と急性腰痛の方、坐骨神経痛の方はおっしゃってくださいますので、この例え話は使って頂いていいんじゃないかなと思います。イメージ沸きますかね?
でも、患者さんと対応する時「体が柔らかくなったらいいですよ」「血流が上がればいいですよ」とだけ言ってると「専門性が足りない」と思われることもありますので、多少はこう専門知識的なことを踏まえてヒアリングすることも大事だと思います。

■急性腰痛のガイドライン


「急性腰痛のガイドラインというのが学術的にはあって、赤信号、黄信号、青信号があるんですよ」と。骨折や悪性腫瘍、感染症、あるいは排便、排尿障害。便意はあるけど便が出ない、尿意があるけど尿が出ない。灼熱感があって焼けつくような痛み、ひりつくような痛み、そういったものがあると、手術が適用だったり、手術以外でも迅速な処置が必要な場合があります。
それからイエローフラッグ。不安感、恐怖心、重圧感、精神的ストレスが過剰に続いていると、なかなか回復が遅いと言われることがありますので「この辺はどうですかね」と。まあ、あんまり最初からいろいろ聞けない状況とは思いますが、これらを踏まえてお話する。こういう区別があることを知っている人が施術しているんだと伝わることが大事かなと思います。

■痛みは悪いもの?


「痛みの悪循環」の話です。何かストレスがかかると交感神経優位になって、筋肉は過剰に緊張して血流が悪くなるので、栄養、酸素がなくなります。そうすると、いろんな症状が出て、症状緩和修復のために炎症性の物質が発生します。
それは発痛物質を含んでいるので、また痛くて、その痛みがまたストレスになってさらに痛みが継続してしまいますっていうね。「こういう中にあなたはいるかもしれないですよ」という話を皆さんもきっとされていることと思います。
ところで「痛みって本当に悪いもんですか?」ともお話するようにしています。いろんな症状が出ますけど、基本的に損傷を修復するために免疫が働いていることですので、痛みというのは悪いことのように思われて鎮痛剤を使うことになりやすいんですが、それは本来は最悪な状態を脱出するためのもの。眠れないと回復が遅れますから、眠れるようにしてあげるなど。本質的に痛みは悪いことじゃなくて、体を回復する修復プロセスで、体がきちんと働いてくれてるということだから、そこは信頼した方がいいんだよっていうことも伝えてあげるのは大事だと思います
痛みが出ているのは、むしろ体の使い方とか考え方、生活習慣に無理があったんじゃないですか、それを見直すきっかけだという風に前向きに捉えましょうという話をしています。

■血流に注目


血流というと血管なわけですね。ヘルニアに注目せず、椎間板に注目せず、私は血管に注目してみました。
このホースを血管だと思ってください。大動脈はもっと太いですが、このような血管が体の奥を通ってるんです。大動脈は脊柱の前を通っています。
「腰痛体操はやめといた方がいいよ」っていう話もあります。「腰に意識が行き過ぎて、それで痛みが増すから」との理由ですが、それは全身のこわばり、凍結バナナの状態で体操するからうまくいかないわけであって、うまく緊張解除して動かしてあげたらいいんです。
体を曲げ伸ばしする時、例えば反らした時には血管がこう圧迫され細くなり、緩めて曲げると圧迫が解放されて血管は拡張する。圧迫、開放、圧迫、開放、これを繰り返すことで血流は回復しやすくなると思いませんか。この血管から枝分かれしている細い血管の血流量も上がる。実はそれが体操の効果なんじゃないかなというふうに思いました。
ストレッチって筋線維を伸ばすイメージがあるけど、ある本によれば、血管が引き伸ばされて細くなったり、撓んで太くなったりを繰り返すことで血流が上がることもストレッチの効果だよ、運動の効果だよと言われていて、それはそうなんじゃないかなと思っています。
だからマッケンジー体操やキャットエクササイズや有名な腰痛体操って、椎間板に作用している面ももちろんあると思いますけども、むしろ血管の収縮拡張を補助しているんじゃないかな、という風に考えました。

腰の痛みや神経痛が強い方は起き上がるのも大変。悪化させず、楽に介助する方法を実演する村井先生
後半は主に実技練習。脊柱を触診し歪みを確認
後頸部~仙骨テクニックを練習しているところ

■参加された皆さんの声


  • 坐骨神経痛についてもっと勉強しなければならないと思いました。これからもよろしくお願いします。
  • 久しぶりのセミナー参加でしたがとても有意義でした。
  • 体の使い方や考え方を今一度見直し、考え直すよい時間となりました。ありがとうございました。
  • 血管や神経などの説明が理にかなっていて、とても腑に落ちる講義でした。
  • 患者さんだけでなく施術者にも優しい技術なので是非取り入れて健全な体作りを心掛けたいと思います。
  • 色々と刺激になり施術の幅が広がるセミナーでした。
  • 自分の体を見直すきっかけにもなり大変勉強になりました。
  • 「治してやろう」というエゴを捨てることは大事だと共感しました。
  • 力を抜くことの大切さを感じました。姿勢と足についての内容が興味深かったです。